玄関における光の納まり

玄関における光の納まり

撮影をしていて、印象に残る場所がありました。
玄関の一角に、小さな採光窓があります。
不透明なガラスを通った光が、壁や造作にやわらかな陰影をつくっていました。

外の景色を見せるための窓ではありません。
明るさだけが、静かに室内に入ってきます。
外の様子がわからないぶん、空間は光と形だけで成り立っているように感じられました。

窓の大きさや位置、枠の奥行き、周囲との距離、造作の高さや素材。
どれか一つが違えば、この光の落ち着き方にはならなかっただろうと思います。
光は入ってくるというより、そこに納まっているようでした。

左の壁にはゆるやかな明るさの変化があり、奥には暗がりが残されています。
木のカウンターは、その光のほうへ静かに伸びています。
主張を抑えた構成でありながら、空間の秩序が自然と伝わってきます。

玄関は、外から内へ気持ちが切り替わる場所です。
この窓は、空間を明るくするというより、落ち着かせるためにあるように思えました。

撮影では、この関係がいちばん素直に見える位置を探して、何度か立ち位置や高さを変えました。
少しずれるだけで、奥行きや光の印象が変わってしまうからです。

空間の質を支える要素として、丁寧に設計されていることが伝わってきます。
こうした部分に、その建築の考え方があらわれるのだと思います。

布施 貴彦
建築設計の実務経験を基盤に、建築写真家として独立。
20年以上にわたり建築撮影を専門とし、累計4,000棟以上、年間約200棟の撮影実績を持つ。
一級建築士として空間構成・素材・光環境を理解した上で、撮影から現像・納品までを一貫して設計。
独自に構築した高効率ワークフローにより、再現性の高い色表現と安定したクオリティを実現している。
建築を「完成写真」ではなく「設計意図を伝えるための媒体」と捉え、設計者・建設会社の価値を最大化する建築写真を追求している。
一級建築士
二等無人航空機操縦士(国家資格)
第三級陸上特殊無線技士
第四級アマチュア無線技士
一級建築士事務所主宰

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